2012年5月31日木曜日

NHK「ここまで来た!うつ病治療」 : 健康増進法ブログ


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2月12日のNHKスペシャルは「ここまで来た!うつ病治療」という特集でした。

日本には100万人の患者がいると言われる「うつ病」。かつては"こころの風邪"などと言われましたが、現在は心の病ではなく脳の病だと、脳科学の進歩で解明されつつあるようです。

そして、うつ病の治療は抗うつ薬による治療が常識でしたが、この治療法も変わりつつあります。

今回のNHKスペシャルは、アメリカでの最先端のうつ病の治療法を紹介しながら、日本でも始まった従来の医師の経験による問診と投薬の治療から、脳科学を利用したより的確な治療への変化を追跡しました。

アメリカでは、うつ病に対する抗うつ薬は3人に1人は効果がないというデータがあるそうで、すでに脳科学を取り入れた治療が普及しつつあります。

その代表的な治療法が、『TMS』(経頭蓋磁気刺激)というものです。


ジャクソン行進発作

これは、強力な磁気を発生させる装置で、脳の一定の場所を直接刺激する方法で、全米400ヶ所のクリニックですでに使用されています。頭部に大きなパッドのような装置を当て、約40分間、間隔をあけながら磁気刺激を与えます。その際にキツツキが木に穴を開ける時のような「ダダダダダ」という軽い衝撃音が発生しますが、特に痛みなどはないようでした。

この『TMS』を症状が治るまで毎日行います。

74歳で若い頃から抗うつ薬を飲み続けたが効果なく、最近は気分の落ち込みが激しくて、薬の副作用の吐き気にも悩まされていた男性は、この治療を始めて2日後には早くも効果が出始め、長年朝食を食べられなかったのが、食べられるようになり、生活のリズムが戻ってきたと報告されていました。そして1ヶ月後には、すっかり元気になり、妻との久しぶりの海外旅行の計画を考えているということでした。

また、59才の男性は10年以上のうつ病で、10種類以上の薬を飲んでいたが効果がありませんでした。『TMS』を受けると、やはり2日目に変化が出て、髭剃りとシャワーが可能になりました。1週間後には生活に意欲も出て、新しいハンバーガー屋を見に行くまでになりました。
2週間後には熟睡ができ、体の慢性的なだるさも取れたと喜んでいました。


トレチノインとクリームとにきび

この『TMS』の治療を行ったアメリカのクリニックでは、7割の患者で回復が認められています

しかし、まだうつ病が完全に治ったかの確認は完全ではなく、まだ研究段階だということで、月に1回はこの治療法を続ける患者も多いということです。


『TMS』が効果を現すメカニズム
うつ病患者は脳の前頭葉の「DLPFC」(背外側前頭前野)という部位の血流が少なくなっていて不活発な状態にあります。

一方で脳の奥深くにある「へんとう体」という部分があり、ここは不安や悲しみ、恐怖といった否定的な感情が生まれる場所ですが、うつ病患者はここが暴走している状態にあります。

「DLPFC」は、判断や意欲を司ると共に、へんとう体の暴走を抑えコントロールする機能を持っています。

ですから、「DLPFC」の血流を良くして活性化すれば、「へんとう体」の暴走にブレーキをかられるので、うつ病の患者は悲観的な考えをしなくなり、同時に意欲も出てくるようになるのです。

その為に「DLPFC」に『TMS』で 磁気を当て血流をよくするわけです。


日本ではこの『TMS』治療が受けられるようになるには、安全性などの面からまだ数年先になるだろうということでした。


犬の接触とアレルギー性接触皮膚炎

しかし、研究という形でこの治療法を試験的に行っている病院がありました。

神奈川県立精神医療センター芹香(きんこう)病院<横浜>です。

ここでは、薬が効かないなど一定の条件下で、磁気刺激治療を行っています。


さて、日本で独自に始まった脳科学によるうつ病治療も紹介されました。

それは、『光トポグラフィー』という機器を使った治療です。

電極が多数付いたヘルメットのようなものを頭にかぶり、「DLPFC」などの脳内の血流量を調べます。その際は患者に言葉を発してもらいながら、血流量の変化をグラフ化します。
するとその変化のパターンで、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症の診断と区別ができるというものです。

番組中に登場した若い主婦は、某病院で軽い認知症と診断され絶望的な気持ちになりましたが、山口大学医学部付属病院でこの検査を受けて、うつ病と診断され、初めて治療を受けようという前向きな気持ちになれたと告白していました。

現在、この『光トポグラフィー』を使ったうつ病治療は、厚労省の「高度医療」として認められて、全国13ヶ所で実施されているそうです。


実は、医師にとってうつ病と双極性障害の判別は非常に難しく、双極性障害の人がうつ病と誤診されると薬の作用で自殺の衝動に駆られる場合があり、危険なのです。
そういった誤診も、この『光トポグラフィー』では、波形のパターンの違いで回避できる可能性があり、そういった意味でも注目される新たな治療法と期待されています。

他に、うつ病を軽度の内に治してしまう方法として、『認知行動療法』(カウンセリングの一つ)があり、これもカウンセラーの積極的な働きかけで「DLPFC」が活性化される効果が認められています。これは日本でも行われている治療法のようでした。


以上、最先端のうつ病治療が紹介されたわけですが、現在のところ日本では『光トポグラフィー』で確実な診断を受けて、正しい服薬をするのが、うつ病改善の早道のようです。

また数年後に『TMS』が認可されれば、さらにうつ病治療の選択肢が増えるでしょう。



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