▶ 腰痛
▼ 腰痛
腰痛は、日常生活の中で非常に多くみられます。男女の区別はなく、若者からお年寄りまで幅広くみられる訴えです。その原因は多種多様ですが、最も一般的な原因は、腰を支えている背骨、背骨と背骨の間でクッションの役割をしている椎間板、そして背骨をつないでいる椎間関節の加齢に伴う変形によるものです。
その他、腰痛の原因となる疾患として、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症・腰椎辷り症、骨粗鬆症などがあげられます。特に骨粗鬆症によるものは、時に強い腰痛にて寝たきりとなってしまうことがありますので、早期診断・早期治療が大切です。
また稀ではありますが、悪性腫瘍の腰椎転移や内臓の病気も原因となります。いずれにせよ、腰痛の治療に際しては、初めに的確な診断が必須ですので専門医の受診をお勧めいたします。
▶ 頚部痛・肩こり
▼ 頚部痛・肩こり
首の痛みや肩周辺の慢性的なコリ、腕や背部にかけての痛みやしびれを訴えるものを総称して「頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)」と呼ばれたりします。
原因は、筋肉疲労や関節の炎症、加齢性変化による首や肩の変形などが挙げられます。疾患としては頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症、頚椎後縦靭帯骨化症などの疾患が原因となっていることがあり、放置した場合手足の麻痺をきたすような重篤な症状へと進行していくこともあります。従って、症状が持続する場合は必ず専門医を受診し原因の検索を行うことが必要です。
▶ 上肢痛
▼ 上肢痛
頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、頚椎後縦靭帯骨化症などの頚椎の病気が原因で頚の神経根(脊髄から出た神経の枝)が圧迫され、上肢の痛みを生じることがあります。この場合、頚を後ろに反らせたり、左右どちらかに傾けることにより症状が悪化する場合があり、肩甲骨の内側に痛みが走ることもあります。頚椎装具、薬物療法、牽引療法、ブロック療法などの保存的治療で多くは改善します。その他に、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩など)、胸郭出口症候群、肩手症候群などでも上肢にも疼痛をきたすことがあります。また頚髄の腫瘍や肺尖部の肺癌が頚の神経根を圧迫し、上肢の疼痛やしびれを生じることもあるので注意が必要です。いずれにしてもまず整形外科専門医を受診することをお勧めします。
intraseptionによる乳児の疝痛
▶ 下肢痛・歩行障害
▼ 下肢痛・歩行障害
下肢痛は腰において脊髄、馬尾、神経根と呼ばれる神経が圧迫されることによって生じる坐骨神経痛によるものと、股関節、膝関節、足関節や筋肉・骨に障害や異常がある場合に生じます。脊椎が原因の疾患には腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などがあります。
歩行障害の原因は、下肢の病気とそれ以外の病気に分けて考えることが出来ます。下肢の病気としては、関節の変形が代表的なもので、股関節や膝関節の関節痛が特徴です。一方、下肢以外の病気による歩行障害は、背骨の疾患による神経障害と下肢の血流障害が主な原因です。通常は、神経障害による歩行障害が多く、臀部から下肢に放散する痛みとしびれで歩くことが出来なくなります。安静時には全く症状が無く、歩くと痛みやしびれがでて長く歩くことができなくなり、歩行と休息を繰りかえす歩行障害を間欠性跛行といいます。この間欠性跛行は腰部脊柱管狭窄症による神経障害や閉塞性動脈硬化症による血行障害の特徴的症状です。歩くと下肢が痛い・しびれるといった症状があるときには専門医の受診をお勧めします。
▶ 腰椎椎間板ヘルニア
▼ 腰椎椎間板ヘルニア
椎間板は髄核と呼ばれる柔らかい組織とその周囲の線維輪と呼ばれる外層で構成されています。髄核は子供や青壮年ではゼリー状ですが、年齢とともに水分が失われてきます。壮年期には椎間板に裂け目が生じて、腰痛を引き起こすことがあります。裂け目が椎間板の外側まで広がると椎間板の内容物が押し出され、突出します。これを椎間板ヘルニアと呼びます。突出した椎間板が神経を圧迫すると下肢に痛みが生じることがあります。馬尾と呼ばれる腰椎部の神経が椎間板ヘルニアで傷つくと排尿や排便の障害が生じることがあります。腰椎椎間板ヘルニアは専門医の的確な診断と治療が必要です。多くは手術をせずに治癒しますが、適切な治療にも関わらず下肢の痛みが治らない場合、下肢の麻痺が進行する場合や前述の排尿 、排便障害がでてくるような場合には手術が必要です。
内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(MED: Micro Endoscopic Discectomy)
経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(PED:Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy)
心臓発作の女性の腕の痛み
▶ 腰部脊柱管狭窄症
▼ 腰部脊柱管狭窄症
背骨には脊柱管と呼ばれる神経の通り道があります。仕事などで無理をしてきたことや、年齢的な変化によって脊柱管が狭くなってきます。腰で脊柱管が狭くなった状態を腰部脊柱管狭窄と呼びます。腰部脊柱管狭窄症は、50歳代以降から徐々に増えてきます。脊柱管が狭くなると、その中を走っている神経が圧迫されて、坐骨神経痛と呼ばれる下肢の神経痛やしびれ、下肢の脱力が生じます。他には陰部や肛門周囲のしびれや違和感、排尿障害や便秘などの膀胱・直腸症状がみられます。これらの症状は、主に立位や歩行時により惹起されます。そのため腰部脊柱管狭窄症では、長距離を続けて歩くことができなくなり、しばらく歩くと休みたくなり、休むと再び歩ける間欠性跛行という状態になります。お薬や点滴、リハビリな� ��を行い治療していきますが、神経の圧迫が強く麻痺が強い場合は手術も検討しなければなりません。専門医に相談し、的確な治療を受けることをお勧めします。
内視鏡下脊柱管拡大術(MEL:Microendoscopic Laminoplasty)
間接的除圧術(X-stop)
▶ 脊椎分離症・すべり症
▼ 脊椎分離症・すべり症
脊椎分離症というのは、脊椎をつないでいる椎間関節の付近で、本来つながっているべき骨の連続性が絶たれてしまっている(分離している)疾患です。主に腰の骨に生じ、学童期に多く発症します。原因はスポーツを行う学童に多いことから、腰にかかる繰り返しの外力によるものと考えられていますが、遺伝的要素も一部関与していると考えられています。本疾患の主な症状は腰痛で、早期に適切な治療を行うことが重要です。早期に診断がされ適切な治療がされれば完治しますが、診断が遅れ適切な治療がされなかった場合は、手術が必要となることもあります。また、分離症が放置され脊椎との間の安定性が損なわれてしまうと、骨と骨との位置関係にずれが生じます。この状態を脊椎分離すべり症と言います。主な症状は 腰痛と下肢痛であり、症状に応じて手術的治療を含めた様々な治療が行われます。
低侵襲経椎間孔進入椎体間固定術(MIS-TLIF:Minimally invasive surgery)
痛みのためのパッチ
▶ 頚椎椎間板ヘルニア
▼ 頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアは腰椎椎間板ヘルニアに比べて発症年齢が高く、40歳以上に多く発症します。原因として首の老化を基盤に明らかな原因がなくても発症します。中には、むちうちやスポーツ外傷をきっかけに発症することもあります。
まず肩こり、首の痛みなどの局所の症状として始まります。このため、初期の局所症状の段階では、ただ単に寝違いの診断ですまされているものも少なくありません。
首~肩~腕~指へのしびれ・痛み、肩・首・背中が痛く重く感じる、筋力低下、頭痛、耳鳴、目がチカチカするなどの症状があります。多くは手術せずによくなりますが、他の治療にて改善しない場合や、麻痺が進行する場合は手術を行います。
▶ 頚椎症・頚髄症
▼ 頚椎症・頚髄症
頚の骨(頚椎)自体あるいは椎間板が痛んで骨棘(こつ・きょく)と言う骨・軟骨が増生すると、頸椎における神経の通り道が狭くなります。このように頸椎が変形して神経が圧迫される病態を頸椎症と言い頚が痛くなります。うなじ(項部)や肩甲部にも鈍い痛みがでることがありますが、薬物療法や牽引療法などの理学療法、軽い運動療法で軽快することが多いです。さらに手足のシビレや痛み、運動麻痺や排尿障害がでてきますと、神経(頸髄)が高度に圧迫されている可能性があります。この様に神経麻痺や運動麻痺がでてきた場合を頚髄症と診断します。軽度のシビレ感や感覚障害、痛みならば薬物療法、牽引療法などで様子を診ることもありますが、その症状が改善されず、手指の運動障害や歩行障害がでてきますと手 術が必要です。頸髄症の場合は、早期に診断し手術も含めた的確な治療を行うことが重要ですので、専門医の診察を受けることをお勧めします。
▶ 頚椎後縦靭帯骨化症
▼ 頚椎後縦靭帯骨化症
首の神経の通り道で、神経(脊髄)の前方にある後縦靱帯が骨化してしまい、脊髄を圧迫する病気です。進行すると脊髄圧迫による頚部や肩の痛み、手足のしびれ、手指の運動障害、歩行障害などを生じます。原因については長い間研究されていますが、はっきりした結論は出ていません。診断は頚椎の単純X線写真で可能ですが、脊髄の圧迫の程度をみるにはMRI検査が有効です。症状が軽い場合は、頚に装具をつけるなどをして安静を保ち、薬物療法などの保存的治療を行います。手指の運動障害や歩行障害が出てきた場合には、手術が必要となる可能性が高いので、専門医への受診が勧められます。また症状がないか軽くても転倒などで脊髄麻痺を生じることがあるので注意が必要です。なお厚生労働省特定疾患として認められ� �おり、医療費の公費負担を受けることができる場合があります。
▶ 骨粗鬆症
▼ 骨粗鬆症
骨粗鬆症とは骨を作っている成分(骨密度)が減少するのと同時に骨の質が悪化する病気です。骨粗鬆症の患者さんでは、軽微な外傷や場合によっては明らかな外傷がなくても骨折が生じます。骨折好発部位には脚の付け根の骨や手首の骨、そして脊椎(背骨)があります。
脚の付け根の骨折は大腿骨頚部骨折といい、ほとんど手術が必要となります。手術を行っても元通りの生活ができなくなることも多く、中には寝たきりになってしまうこともあります。
脊椎に生じる骨折は圧迫骨折といわれるもので、骨折が生じた直後は骨折部に一致した痛みが主な症状です。また骨粗鬆症の患者さんにおいては、痛みがなくても背骨が骨折してきていることがあります。一度潰れた背骨は再び元の形には戻らないので、痛みがとれた後も背骨が曲がったり、身長が短くなったりといった症状が残ります。背骨が曲がってしまうと、背骨の痛みだけではなく、お腹が圧迫されるなどの内臓的な問題が出てきます。
このような骨折を予防するためにも、全身(背骨と脚の付け根)の骨密度を測定し、さらに骨の質を調べる(血液検査や尿検査)ことが必要であり、自分の骨の状態を理解することが大切です。現在はいろいろな飲み薬・注射などがありますが、一人一人にあった治療法がありますので、ぜひ相談してください。
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